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『像景をカタチづくる建築家』

  • アナダ
  • 2016年10月1日
  • 読了時間: 11分

谷重義行建築像景/谷重義行さん

建築家紹介vol.5は吉村さんからの紹介で谷重義行建築像景の谷重義行さん。

私たちが通う大学の非常勤講師ということもあり、普段どのようなことや活動をしているのか興味津々。たくさんの聴きたいことリストをまとめ、いざ事務所へ!

泉野図書館の大通り沿いに谷重さんの事務所はあります。谷重さんの事務所はなんと、中日新聞社のビルの二階にあります。ちなみに、私穴田は今回が初インタビュー。ガッチガチでドアノブを回します。

ガチガチな表情の穴田

社員さんに通された部屋に入りきょろきょろすると、たくさんの模型が、雑誌が、木材のサンプルが・・・!なんとも建築事務所らしい雰囲気で、そんな空間に圧倒されていると、直前まで仕事をされていた谷重さんが、奥の部屋からいらっしゃいました。

穴田の緊張が抜けない中、インタビュースタートです。

“たくさんの刺激があった子供時代”

穴:子供のころから建築家になりたいと考えていたんですか?

谷:親父は農業も工務店も大工も。時にはアイスクリーム屋やってたりして。

穴:アイスクリーム屋まで!?

まあ、割とそんな環境だったし、機械も使えたから、僕もいろいろと自分で作るのが好きだったんだんです。だから、大学にいる時も家具つくったりとか・・・。それは今もそんな感じなので。例えば、お客さんが家を建てる時「予算ないっ!」ってなったら、壁全部自分たちで左官したり、家具つくったりもしますよ笑 だから、うちのスタッフはみんな左官できますよ。

穴:まじすか。

谷重建築像景事務所のポイント①

【―スタッフみんな左官できちゃう―】

事務所の壁一面に工具が・・・。

谷:話は戻るけど、別に「○○になりたい!」ってことはなかったんですけど、やはり大学に入る時に何学科選ぶか決めるので悩みます。

当時、家の庭に池をつくって、鯉とか金魚の養殖とまではいかないけど、産卵させて、自分で飼ってたりしたので、水産行くか建築行くかで悩みました。でも、実家の環境もあったし、建築の方がみんなが住む家をつくれて需要あるから建築を選びました。

農業や水産、大工に家具づくりなど、様々な体験をしてきた子供時代。そこでの経験が建築をつくることへのイメージに大きく影響しており、それは事務所名にも反映してきます。

“カタチの奥にあるもの”

穴:そもそもですけど、事務所の名前についている「像景」って、どういう意味ですか?調べても出てこなくて・・・。

谷:そう。事務所を開設する時につくったんだけど、普通「ぞうけい」は「造形」と書きます。建築で重要なのは具体的な「もの」の形をつくることじゃないんです。建築って、形をつくるんだけど、それは本来形じゃなくて、そこで住んでいる生活とか。そういうイメージです。イメージだから「像」なんです。こういう生活したいとかこういう風に生きたいとかそういうイメージみたいなもんなんです。

穴:イメージですか・・。そういうことを考えてつくっていきたいという意味も込めてその言葉を?

谷:建築は、形つくって終わりじゃないので。形はある程度の結果なので、その背景としては、やはりお客さんの生き方とか、これからの将来の希望とか家族関係とかまあそういうのがあるわけです。それをつくってあげるのが仕事なんです。

穴:形の根元にあるイメージを創造しようということなんですね。

谷:いろんな形が出せるけど。やはりそれ(像)がなかったら一軒の家を建てるときにその人に適した形がでないと思う。例えばこういうのが好きですっていっても、これそのものよりも、もっと背景にある・・・例えばこれがある作家が作ったものだとすると、これを作った人の何か背景的なものが好きだったりすることもありますよね。

穴:そのイメージをくみ取るコツみたいなものはありますか?

谷:お客さんがしゃべって、これが好きですと言ったとしても、ものを鵜呑みにしてそれをつくるわけではない。その人がなぜそれが好きか、みたいな背景のところで何を考えているのかな?みたいなところから、じゃあこうしようって感じでやっています。・・あとは、直感かな笑

穴:直感とは・・・?

谷:人に会った時の勘みたいな。そのお客さんに合った時の直感ですね。この人「こういうのが好きだな」とか「嫌いだな」とか。あるいは「こんな人生したいかな」とかってことがイメージできないといけない。そのためにいろんな人と会って・・・以前鴨川とかの河川敷を歩いている時、そこにいたホームレスの人と二時間くらい話したりとか…そういうこともありましたね。(笑)

焼き物とかは、「ああ、じゃあ作り直します。」とか「違う商品もってきます」とか、できるけど、家はそうできない。だから完成した時に、「ああ、そうでした!」とか「思ってた以上だった!」ってことにしなきゃいけなくて、「ここ、これじゃなかったのに…」ってことが、一部でもあったらダメなんです。だから、そこを避けるにはどうすればいいか。が大事だと思います。だから、会って相手の話を聞くことはすごい重要だし、この設計はどういう想いでやっているかを説明するのはすごい大事になってくると思っています。それをどうするか、ですね。

穴:打ち合わせするときは、この場所で?

谷:この場所でもするけど、やはりその人の生活が見えてこないと設計はできないので、打ち合わせはなるべく施主の家でするのが原則です。例えばそこに、その親も同居するときもある。やはり親は親で意見持ってる。子どもと親が意見が違うこともよくあります。みんな満足できるものにしてあげた方が幸せですね。そうしてあげたいと思うから。やはり住む人全員の話が聞ける所で打ち合わせした方がいいと思うので、施主の家に伺って打ち合わせをする。そうする場合が多いかな。

谷重建築像景事務所のポイント②

【―打ち合わせはお宅におじゃまします―】

“新たな建築の可能性を探して”

穴:谷重さんは「建築家Catalogue」や「AnT」など、様々な活動をされていますが、「NPO法人茅葺き文化研究会」では、専務理事をされてますよね。

建築家Catalogue:石川県の建築家で構成されたグループ。トークショー、住宅見学ツアー、建築展などを開催し、住まい手と建築家が直接出会い、意見交換できる場を提供している。

AnT:富山に拠点を持つ建築家ユニット。さらに良い住まいづくりを目指し、住まいについての研究会やセミナーを行っている。

谷:茅葺きは、地道に根気強くやってるね~。

「どういった活動をされているんですか?」と聞くと、資料をたくさん持って話をしてくれました。NPO茅文研では、金沢における茅葺きの地産地消のために茅の生産から流通までを行ったり、茅文化を発信したりしているそうです。

写真は子供向け絵本『かやじぃの救出』byNPO法人茅葺き文化研究会 ―ブッキーとなかまたち―シリーズの第一作品のようだが、主人公ブッキーは、まだ出てきていない…。

谷:茅は、人工的なエネルギー使わなくても生産され、それが自然の中でバクテリアで分解されて土に帰るというサイクルを持っている材料です。だけど、一度作ったら100年もつわけではなくて、10年とか20年ごとに換えていかなきゃいけない。昔はそれを地域で協力して葺き替えをする。コミュニティをつくっていたんです。だから、現代の中でやっていくと、自然の素材であって、なおかつそれが多方面で利用価値があり、最後は土に帰って行くサイクルの中で、違う立場の人が関わってくると、新しい環境が生まれる。そういう可能性を持っているのが茅です。だからやってるの。(笑)

穴:なるほど。

谷:これが去年やったバス停です。茅葺きの屋根がのってるけど、それだけじゃつまらないから。ちょっとデザインを変えて凝って作ってみました。こういうことをもっと大きな規模でやっていくと、めちゃくちゃ楽しい建築できると思うでしょ?

穴:なんか、すごいいいですね。この直線じゃない感じが。滑らかに曲がっていく感じが・・・

谷:こういう工業製品を使ったものじゃなくて、、なんか、やってる最中に形を変えていけるような気がする。なにか、そういう建築って楽しい!今こじんまりやってるけど、いまから認知されていってある程度の規模の茅を生産できるようにして、それ利用して新しい建築をつくっていく。そうしていきたい。おもしろいよ。ほんとに。

“趣味を超えた趣味”

穴:突然ですが、何か趣味はお持ちですか?

谷:ガーデニングと薪割りかな・・・薪ストーブが家に2台あってそれのために薪を集めなければならないんですけど・・・

谷重さんは、郊外の古民家を改修して住まわれているそうです。広い敷地に農家だった母屋と小屋。奥に生えている大きな杉の木まで谷重さんち。そんな大きなお庭を、奥さんと一緒にガーデニングして、季節の移り変わりを楽しんでらっしゃるそうで。お庭になっている様々な植物の写真を見せてくれました。

谷:・・・これは、ブドウ!ブドウを軒裏に這うようにして、壁面がブドウで覆われていくような感じで。そして来た人がみんな採って食べてる。笑

ガーデニングの一部。ブドウが生っている。その他にも、ベリーなど。奥さんによる花ブースも素敵だった。

“模型絶対主義”

穴:ここで、またお仕事の話に戻りたいと思います。お施主さんとの打ち合わせの際は、どのような資料を使われるんですか?

谷:基本的に図面と模型です。図面と言っても僕の場合には割とスケッチなので。でも、どんなに最初でも、立体的にわかるように模型はつくる。必ず模型はつくる。例えばこうやって図面をフリーハンドで描くとする。描いてるときにはもう、立体的なイメージは大体できている。敷地条件としては、「こっち山みえます。」とか、あるいは「隣家があります。」とか、これも描いてる最中に見えてくるので、模型の屋根の形もほぼ、想像はついてきている。そうすると、すぐに模型はつくれる。模型つくって、見せて。じゃあ、「屋根勾配こうなりますね~。」とか、「でもこっちの並びにこんなのあるから、ここはわざとフラットな水平ライン出てた方がいい。」とか、「隣こんなんあってね。」とか、打ち合わせするんです。

谷:あの辺の模型も、けっこう切り貼りが多いでしょ。ああやって、切ったり貼ったりして、だんだん精度あげていく。

谷:最初にS1/100で雰囲気を掴んで、S1/50に変える。・・S1/50になった段階で、フレームを決めていかないと、形態が決まってこない。あとは直し直しで。これなんか、三つくらい作ってるかな。模型つくったらスタッフに測ってもらったりする。

穴:測るっていうのは・・?

谷:模型を。その模型測って、図面にしてもらう。模型つくってる最中に、「大体これくらいかな。」ってのを決める。「プロポーション的にこんくらいがいいな。」とか。あとは、足したり切ったりして、そして、それ測って図面にする。

穴:へえ~!立体で考えて、それを最終的に紙にするんですね!

谷重建築像景事務所のポイント③

 【―建てる前に建てる!―】 

事務所の様子。棚には過去の模型が数多く並んでいる。

“住み手が自由に・・・”

谷:僕の場合は、デザイン的に、柱梁が見える設計が多い。だから、骨組みをどう組むかがすごく重要になってきていて、骨組みを組む秩序がそのままデザインになってきている。しっかりしたフレームのスタディがけっこういる。模型で組み方をほぼ決定して、大工さんに見せる。

穴:骨組みが見えるっていうのは、谷重さん自身のこだわりなんですか?

谷:そうだね。見えてる場合の方が普通の住宅では多いですね。というのは、ある程度後から施主が手を入れられるようにしたいと思ってる。柱も梁も隠れてたら、どこにビス付けれるか分んない。ある程度の骨組みをものを見せて、そこを狙って、「違う飾りしよう」とか、「ここは格子付けよう」とか、「将来ここで間仕切りして、子ども部屋二つにしよう」とか、すこし分かりやすくしてあるんです。そうすると、実際に生活するときに、いろんなことを自分でやってみようって気持ちになるでしょ。だから、柱梁が出るデザインが多い。でも、やたら出るってもの嫌だし、柱全部出ても意味がない。デザイン的には。だから、出る柱と出ない柱を決めて秩序付けるのが大事ですね。

過去の物件より。確かに構造体が現しになっている。それにしても、気持ちよさそう...

“建築の本来持つ力”

穴:それでは、最後の質問です。建築家としての「今の夢」ってありますか?

谷:難しいね(笑)あんまりないんじゃないの? あ、だけど!これは言った方がいいな。と思ったのは、たとえば、幼稚園を設計したときに、その幼稚園に来た自閉症の子供が「1時間普通で過ごせた」と言うんです「以前は、30分ももたなくて、走り回ったり奇声あげたりしてたけど、ずーっとちゃんとしてます。」って。

穴:ほーぅ…

谷:老人ホームつくった時にも、「以前は、月に何回か救急車呼んでいたんですが、救急車呼ぶ回数が減ったんです。」とか。「風邪ひかなくなったとか。」あるんです。お医者さんって病気になったら治してくれる。じゃあ建築も病気を治すとは言わんけど、病気にならないような環境をつくることができる。それは肉体的にもだし、精神的にも。建物の役割って、お客様に喜んでもらうんだけれど、それだけじゃなくお医者さんと同じくらいのこともできる。建築によって、生活が安定したり、精神が安定したりとか。できるわけです。やはり、そういう力を建築はて持っているんです。そこを信じてやってますね。単に喜んでもらう以上の力を建築は持っていると思うことが大事です。だから、そういうものを人に理解してもらいたいし、そういうことを享受してもらえる人を増やしたいなと思ってる。

穴:・・! 魔法みたいですね!

谷:ほんとに。やはり「建築」っていうのは、普通の人が思ってる以上にすごいんですよ!

谷重建築像景事務所のポイント④

【―建築の力を信じてる―】

建築のもつ本来の力を引き出し、人に還元する谷重さん。

その人の考えるこれからの人生を建築にする。

生活に、暮らしに、人生に、将来に・・・これらの像景を谷重さんと一緒に考えていきませんか?

〒921-8034 石川県金沢市泉野町4-22-15

TEL  076-280-1456

FAX  076-280-1457

E-mail tao@spacelan.ne.jp

(穴田)


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