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『"生きる家"の設計士』

  • たぶち
  • 2016年8月29日
  • 読了時間: 9分

林建築設計工房/林正人さん                   

建築家紹介vol.4は、林建築設計工房の林正人さんです。

Vol.2で紹介した奥村さんからの紹介で取材させていただくことになりました。奥村さんとは共同設計をしたりなどの交流があるようです。

林さんに会いに、いざ金沢市富樫へ!

―林さん家は林に囲まれていた―

裏路地を進んでいくと林に囲まれた立派な家がありました。

「猫がいるんだよね。」玄関でつっかい棒をしながら林さんが迎えてくれます。

いつでてくるかわからない猫を気にしつつ中へ。

応接間へ向かう書斎を通ったときには、まるで別空間のようで。

高校も近くにある大通り沿いにありながらも、事務所の中に入ると用水の水の音が聞こえるくらい静かな居心地の良い事務所でした。

そんな居心地の良い空間でインタビュー開始します。

Q. 建築家になりたいと思ったきっかけをお聞かせ下さい。

林:高校卒業するときに進学先を考えますよね。その時に何学部に行くだとかで考えるわけですけど、僕の場合は昔から手先は器用な方だったので、ものづくりはしたいと思ってて。美術系のとこもあるけど、ちょっと大きなもので、かつ、色々、社会と結び付く様なものを作りたいと思って。

H:それが建築だと!!

林:そういうことですね。彫刻とか陶芸みたいなものとかもありますけど、社会貢献みたいなことをしたいと思って、少しでも社会性のある仕事、それで建築の設計がしたいなと思って大学を選んで入りましたね。

―建物が生き続けていく―

Q. 金沢出身であり、今も金沢で仕事をされていますが、金沢のどんな所が好きですか?

林:いろんな歴史が残っていて、建物や工芸などの文化がたくさんありますよね。あと、必要な店や施設がそう遠くない距離にあったりだとか町のサイズがあんまり大きくないところがいいですね。あとは、地震が少ないとか、そういう災害が少ないという意味では良いところですね。

H:町家の物件を手掛けてることがありますよね。林さん自身、町家に対する想いというもの、特別な想いはあるんですか?

木工家である林さんのお父さんのカンナ。大小、様々なものを使い分けている。

ちなみにインタビュー時に私たちが座っている長椅子もお父さんの作品。

林:そうですね。独立してからは、町家を触ることが多くなってきたんですけど。そうですね、現代の住宅にないような、あの造作といいますか、造形美みたいなものは存在しますよね。それが、あの普通の庶民のスタンダードな家の中にたくさん存在する。今は、ちょっとそんなことしようとしたら、特別な大工さんを連れてこないとできないんじゃないかとか、思うようなことが、普通にみんな行われていて、大工さんや棟梁が、その造作物を組み合わせて、いろんなバリエーションを作りながら、かつ、ある一定のデザインの層みたいなものをつくっている。それが風景にちゃんとなってくるじゃないですか。

H:林さんから考えて、町家の可能性みたいなものっていうのは何かありますか?

林:いろんな用途に使っていただいていいと思いますね。やっぱり、生きてる建物っていうのが重要ではないかなと思うんです。その場合にいろんな用途に変換しながら、建物が生き続けていくことが価値があるのかなと思うんです。使えないような、寒くて、暗くてっというような、そんなものを残そうって思っても。まあ、当たり前の話。そのだれも望まないようなものは残らないから、残るような形に、形を整え直して使い続けてあげれば、みんな魅力を再発見してくれて、大事にしてくれて、たぶんコミュニティも一緒にできてきて、町がもっと楽しくなっていくんじゃないかと思いますね。

―全部、把握したうえで設計する―

Q. 住宅をつくる上での工夫をお聞かせ下さい。

林:これからどんな風に暮らしたいかを漠然と聞くとなかなか具体的な答えは返ってこないですよね。お客さんから、大きいリビングにしてほしいとか、たくさん光の入る部屋にしてほしいとか、そういう風には出てくるんですけど。

例えば、簡単なことでも、外から家に帰ってきたら、洋服をどうするっていう話になると、どっかに掛けるとか、どっかに置くとか。実は帽子がたくさんあって、帽子がある箱に入っているんだとかね。そんな、その人その人の生活に、自分たちがいつも使っているような、いろんな工夫をして生活してますよね。それを建築の中に取り込んでいくようにしています。

H:お客さんとの打合せでは林さんの方から具体的なキーワードを引き出すように進めるんですか?

林:うん。ただ、使い方が作ったものと合致していないと、例えば、一方的に素敵につくっても、設計者の思いとぜんぜん違う使い方をしてると、使い難くいですよね。それじゃあ中々快適に住めなくて申し訳ない。だから、施主の希望をうまくかなえて、最終的に設計したものがうまく使われるようにするためには、いろいろ聞き出さなきゃいけない。だからそういう意味でも色々聞いてどういう風にしたいか、その方だけが住んでんじゃなくてお子さんが住んだり、もしかしたらお孫さんが、その方が死んでから住んでるかもしれないから。そんなような話も含めて、お話をします。

H:打合せはお客さんがここに来てやるんですか?

林:うーん、人によります。ここで打合せすることもあるし、お客さんのうちにいくとお客さんの生活って見えるでしょ。だから、一回はお邪魔しますし、そのままそこで打ち合わせしたほうがよければ、そこで。

H:奥村さんから、「林さんはお客さんの今住んでいる家から、移り住む際に持って行くもののサイズとか数とかそういうのを全部、把握したうえで設計をする」と伺いました。本当ですか?

林:けっこう、全部測りますよ、こういうのとかも、全部、 大変なのが衣類がどんくらいあるのか、収納ケースとかもっている人とかね、普通にいっぱいあるでしょ、10個も20個もあるとかっていうとそのサイズを一応確認して、×10個とかね、しますよ。

林さんが描いたメモ

(林さん提供写真)

実際に上のメモを用いて設計された住宅

お客さんはすぐに生活が始められる

(林さん提供写真)

―自分で本当に何がしたいのかを考えてもらうんです―

H:お客さんに渡した後は、実際にスムーズに使いこなしてくれていますか?

林:そうですね。結構みなさん、楽しんで住んでいらっしゃいますね。なかなかね、そこは難しいところもあって、自分の生活をあまりお見せにならない方は、逆にうまく成立しないっていうか、調べさせてほしいんだけど、プライバシーを壊すわけにはいかないから、たまにうちに入れてくれない方っていらっしゃるから、そこはそこなりにちゃんとつくんなきゃいけないんだけど、細かい所で把握できないっていうかな、そういうのもありますね。

うちみたいな用途だったら、その人とその家族の固有のスペース、それで会社のひとだったらあんまり考えてもらうわけにはいかないかもしれないけども、その人に考えてもらうんです。例えば5年後どんな生活をしているのかとか、10年後どんな生活しているのかとか、ここをどうやって使いたいのかとか、例えばキッチンでなにをつくりたいんだとか、例えば掃除をどうしたいんだとか、考えてもらうんです。ここをこうやってこうすると例えば、広いけど遠いよとか、こういう風な換気扇をつけると、掃除はしやすいけど、こんな見かけだよ、とかね。そういうのを具体的に説明して、選んでもらうというよりも、自分で本当に何がしたかったのか考えてもらうんです。

―当たり前―

林:僕らの仕事はかっこよくても当たり前だし、便利でも当たり前だし、快適なのも当たり前で、安心で安全なのも当たり前でしょ?だからそこから先にどれだけ積み上げられるか。

お客さんの思っている以上の結果を出す。それでどれだけ喜んでもらえるのかな、っていうのが普通の目標、大事な目標かな。僕ら設計事務所の仕事は、普通の家を作るっていう世界では、設計事務所で家を作る人はまあ少ないですよね。だから僕らが何をしているのか、設計事務所に頼む必要とか、頼んだらどうなのかってほとんどの方が知らないんですよ。だからもっと僕らがやるとどうなるんだっていうことを伝わらないと、街ももちろん良くなっていかないし、もっと僕らの設計のやり方次第でそれぞれの皆さんの人生の充実感をもっと実感できるはずなんだけど。それが上手く伝わっていないことがあるから、とにかくもっと僕らがどれだけ出来るかをしっかり伝えなくてはいけない。

設計事務所に頼んでよかったねっていうと他の設計事務所に頼もうかなって思うわけじゃないですか、どこの設計屋さんもみんな一生懸命頑張ってると思うんだけど、住宅産業の世界では、ハウスメーカーとか工務店の方が断然数の上で強いんです。もっと頑張れるようにするには、もっとお知らせしなきゃいけないのかなって思うわけですよ。

―一緒に考えていく家づくり―

Q. 建築家になって思うことをお聞かせ下さい

林:建築の設計屋さんがもっと活躍できるような、そんな社会になるといいな、と思ってます。社会が僕らの価値に気づいてくれたらいいかな、って思ってるんですよ。

お客さんは家を建てるとなるとハウスメーカーに依頼することが多いですよね。ハウスメーカーもすごいしっかりしてるんですよ。彼らは彼らなりに何千棟とつくるためのノウハウをしっかり蓄積してて「普通こんなところまでしてあるかな」ってところまでしっかりした施工でされてて。そういうところの信頼性っていうのは、量産体制を整えるためにもしっかり形成されてると思います。でも、僕たち設計事務所に頼んだらどうなるのかって考える人も少ないと思うんです。設計士さんと一緒に家をつくっていきたいといった、一方的ではなく「一緒に考えていく家づくり」をしたいといった考えの人には、ぜひ設計事務所も考えてもらいたいですね。

記事冒頭に紹介したねこちゃん(うす茶の方がもも、黒と茶の方がのんの)

2匹のねこちゃんも皆様が建築事務所に来てくれることをお待ちしております。

                           (林さん提供写真)

まじめで、それでもってお客さんのことを第一に考えてくれる。そんな印象な林さん。

お客さんのお家にある家具の大きさを一個一個しっかりと測るこまめさは、新しいお家が建った時に、すぐに新生活に馴染めるためにという思いから。

お客さんの未来の生活までも考え、試行錯誤して設計する建築家さんなのです。

〒921-8171 石川県金沢市富樫2丁目1-27

TEL  076-242-0457

MAIL msshayashi@ybb.ne.jp

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